あ〜さんの音工房

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すりっと全部お見通しだ!/ピーちゃんの遺伝子/それでもサンタはやって来る

すりっと全部お見通しだ!


図画工作の時間には
図工室へ行って4人で大きなテーブルを囲み
作業をしたもんだ。
それは男女混合で
出席番号順に決められていたので
勝っては出来なかった。

或る日の事だ。
まだ始業前だったと思う。
それは起きた。

「なんか、クサくない?」

並んで座っていた女子が突然言い出した。
まおみ(仮名)は
女子の中心人物で影響力を持っていた。
私はクンクンしてみたが確かに臭う。

「やだ・・・あ〜さん!?」

おいおいおいおい、ちょっと待ってくれ!!
私は一瞬にして事態を把握した。
この女は私にそれを押し付けようとしているのだ!!
犯人はまおみに違いなかった!!

誰もしたくてする訳じゃない。
自分の意志とは無関係に出てしまう。
それがオナラだ。
彼女も仕方なくすかしたんだろう。
それは構わない。
だからと言ってそれを他人のせいにするのはダメだろう。
澄ましていればなんて事無かったのに
騒ぎ立てるもんだから注目を集めてしまったぞ。

「だれか屁こいたんじゃねのか?」

「臭いぞ! どっからだ?」

容疑者は私を中心に絞り込まれている。
マズい。このままじゃ犯人として血祭りにされてしまうよ。

子供は馬鹿で残酷なものだ。
クラスの面前でオナラなんてしようもんなら
すぐにあだ名が付いてしまう。
「屁こき虫」とか「ヘコキ〜ノ」とか
「プップくん」とか。みんなの周りにもいただろ?
そしてそれは卒業まで続くんだ。
クラスの集合写真に(くすぐられて)
最高の笑顔で写った奴は
その写真が配布された日から
「スマイリー」と呼ばれ続けた。卒業まで。

スマイリーならまだしも
下ネタが付いたら最後
いじめ ↓
学校嫌い ↓
不登校となりかねない。
なんとしても回避しなければならないぞ!
突然降り掛かった不幸だが
戸惑っている暇など無かった。
とにかく声を上げなければ!

「ぼくじゃないけどなぁ」

私は出来るだけ冷静にアピールを始めた。

「でも、まおみがあ〜さんだって言ってるぜ!」

くそ〜、まおみの奴〜!!
事が済んだら前髪3センチ切ってやる!!

「そう言われてもなぁ・・・」

まおみは権力者だった。
その美貌と学力の高さで男子の支持も厚い。
このままじゃ犯人にされてしまう。
冤罪は絶対にイヤだ!!
こうなりゃまおみの事責めてやろう思った
その時だ

「俺、まおみが怪しいと思う!」

おぉ! ナイス助け舟!!
君の落書き帳にスーパーカー描いてやるから
もっと言ってくれ!!

「だって一番始めにクサいって言い出しただろ?」

そうだ、その通り! 犯人はまおみだ!!

「あたしの訳ないでしょ!!」

いいや、お前だよ。ひどい女だ! まったく!!

もう2、3年先なら
「俺が屁をこいたが、何か?」と
かばってやる事も出来ただろうが
6年生だった私にそんな余裕は無かった。


理不尽な事、不条理な事には
声を上げて抵抗しないと、とんでもない事になる。
小学生でも人生決まりかねないんだ
大人がモジモジしていると大変な目にあってしまう。
どれだけ周囲に指をさされようと
警察で違法な取り調べを受けようと
やっていない事は
やっていないと言い続けなければダメだ!!
冤罪となった多くの人達は
やっていない事を認めてしまっている。
それじゃダメだ。
何が何でも「やっていない」と
言い続けなければ!!

結局犯人探しはあやふやなまま終わり
クラスの興味は別の事に移っていった。
ナイスな意見をしてくれた彼の落書き帳に
スーパーカーを描いたかは忘れてしまったが
まおみとは仲良くするでもなく
いがみ合うでも無い関係を保って
卒業を迎えた。

昔の小学生だって
楽しい事ばかりじゃなかった。
権力者からのパワハラ
日々降り掛かってくる火の粉を
すりすりすりっとすり抜けて
楽しい事を探していたんだ。
自分でなんとかしたり
友だちに助けられたりしながらね。







ピーちゃんの遺伝子


「ドン」

曇りガラスに向かって飛んだピーちゃんは
鈍い音とともに絨毯の上に落ちて
目を閉じたまま2、3度震えた。


セキセイインコのピーちゃんは
小田急線に揺られてやって来た。
不安だったのか車内でピイピイと鳴き
親父の鞄の周りの人を
キョロキョロさせていたという。

エサをあげ水を替え
出かける時にはカゴを菜っ葉の森にして・・・
ピーちゃんは家族の一員だ。
ピーちゃんだってカゴから出て
気分良く飛び回っている時でも
たまには私達の肩や頭に乗ってピイと鳴き
サービスすることを忘れない。
ふわふわとした頭を撫でてやると
気持ち良さそうに目を細め
クチバシの中でチリチリと鳴いている。


鳥は人を見下ろす事が出来る
本来人の手の届かない存在だ。


何故だったのかはわからない。
ピーちゃんはその日に限って
曇りガラスに向かって飛んだ。
真っ直ぐに、勢い良く、迷い無く。
それはただ明るい方に向かっただけなのか
それとも逃げ出したかったのかは
今でも本当にわからないんだ。


鳥は大空を舞うものだ。
例えそれが
愛玩用に飼いならされた小鳥であったとしても。


私は肩を揺らす妹の後ろ姿と
ピクリともしないピーちゃんを
ただ、交互に見つめていた。






それでもサンタはやって来る


サンタさんを信じていた。
小学3年生くらいまで。
一度も会う事はなかったけれど。


サンタクロース=
グリーンランドに住みクリスマス・イヴの夜に
良い子の元にプレゼントを持ってやって来る
白ヒゲ・赤服で小太りのじいさん。

北半球ではトナカイの引くソリで空を飛び
南半球ではサーフ・ボードに乗り
煙突をつたって
ぼくらの枕元まで来てくれるという。

一説によるとフィンランドには200人ほどいるし
中には日本人サンタさえいるそうだが
だからと言ってデパートのおもちゃ売り場で
風船を配ったりしてないらしい。

数年前からはソリに
日本製ナビゲーションが取り付けられて
道に迷う事は無くなったそうだが
最大の謎は
なぜぼくの欲しい物を知っていたのかだ。


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「ねえねえ、サンタさん来たぁ?ぼくんとこ今年も来たよ!」

次の日階段の踊り場で出会った5階に住むノブタダくんに
ぼくは喜び勇んで声をかけた。

「あ〜さん、なに言ってんだよ。サンタなんて本当はいないんだよ」

彼は2つばかり年長だった。

「そんなことないよ! 
ベランダの窓のカギ開けておいたから
そこから来たんだよ。妹もプレゼントもらったよ!」

そうさ、カギを開けておかなくちゃ入ってこれないからな。
煙突ないんだから。

「そうゆう問題じゃないんだよ・・・
あのねぇ、プレゼントは親が用意しておいて
寝てる間にこっそり置いてんだよ。包み紙見てごらんよ」

んっ? きれいに包んであったけど・・・

小田急か大丸のだっただろ?」

んっ? そういえば・・・

「サンタが駅前のデパートでプレゼント買うと思う?」

なんてことだ!! サンタさんの正体って親なのか!?
ぼくは階段を駆け上がり、母さんのもとへ走った。

「お母さん、サンタさんって本当はいないの!?」

すがって聞いた。

「そんな事ないでしょ。昨夜も来てくれたんだから・・・」

とぼけたってダメだぞ。ズバッと聞いてやる。

「お父さんと、お母さんがサンタなの!?」

「・・・・・・・・・・・」

黙っちゃったぞ。

「誰に聞いたの?」

「ノブタダくんが言ってた。 ねぇ、そうなの?」

「・・・サンタさんは忙しいから替わりにね」

「なんだよ〜っ!!」

「どこのお家もそうなのよ。だから・・・」

「なぁんだよ〜〜〜〜〜ぉ!!」


ショックだった。
クラスのミホちゃんに不潔だって
罵られたのを上回るほど。


一体なんだったんだ!?
煙突の無い家を呪いながらベランダの窓のカギを開けて
靴下が小さ過ぎると何足も枕元に置いて寝た
イヴの夜の儀式は!!


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こうしてサンタさんが
なぜぼくの欲しかったプラモを枕元に置けたのか解ったが
一度くらい会ってみたかったなぁ。
赤鼻のトナカイが引くソリに乗って
空を飛んでいるサンタさんと。


今の子供達が
どれくらいサンタさんを信じているかは知らないけれど
良い子のお家には
今年もサンタさんはやって来るに違いない。
ベランダの窓のカギさえ開けておけば。