あ〜さんの音工房

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スラムカムイ$ミリオネア

 

 どん底からのスタートだ。ブレーキトラブルが明らかになっても、風当たりは強い。小林可夢偉選手のF1復帰戦は、スタート直後の1コーナーで終了した。


 仮にアルバートパーク・サーキットの1コーナーを駆け抜けたとしても、おそらくはリタイアしていただろう。完走すら期待出来ない状況ではあった。だが、弱小チームは金満チームがもたついているうちでないと下克上は望めないのだ。それはここ数年の流れからも明らかで、最終的には経済力が結果を征している。レギュレーションが大きく変更された今シーズンこそ最初の数戦が勝負。特に可夢偉選手の属するケータハムは、前シーズンの後半を投げ出して2014シーズンに備えたのだから尚更だ。F1においては、上位チームと下位チームとでは、同じレギュレーションで作られているのか疑問なほど車の性能差があるそうだ。なので上位チームが調子を上げれば、辛酸を舐め続けることになることは間違えのないところ。だからこそ初戦でのスタート直後のリタイアは痛い。チームに走行データが全くもたらされないからだ。これでは次戦に繋がらない。
 レース後のデータ解析で、リアブレーキがまるで効かなかったことが明らかになり、ドライバーの責任は問われないそうだ。だが、地面を這いずり回るどころか泥沼に首まで埋めて喘いでいる状況に変わりはない。


 昨日BSで放送された映画『スラムドッグ$ミリオネア』を観た。クイズの裏側を描いているのかと思っていて、これまで観逃していたのだが、まるで違った。
 インドのスラムで生まれ育った少年が、テレビのクイズショーに挑戦して連戦連勝するが、イカサマを疑われ最終問題の前に警察で尋問を受ける。そこで何故答える事が出来たのかが、少年の生い立ちと共に明かされるのだが、この作品は少年の半生記であり、クイズはそれを語るための手段でしかない。そしてそれは、ラブ・ストーリーだったのだ。びっくり。
 私は観進めるうちに、可夢偉選手がダブって仕方なかった。完走すら危ういチームで、悪戦苦闘。なんとか抜け出したいが、手段すら無い。来シーズンからは満を持して日本のホンダがパワーユニット屋として帰って来る。アピールしたいが、どうすれば良いのだ。ベストを尽くしましただけではダメだろう。ケータハムに初めてのポイントをもたらせば良いのか? それで不足ならどうする? 表彰台に立つ? ブレーキすら効かないあの車で? 可夢偉選手にミリオネア出演のチャンスは来るのだろうか・・・
 『スラムドッグ$ミリオネア』は驚くほど力強く、想像も付かないほど荒唐無稽で、ベタベタにファンタスティックな作品だった。未見の方には強く推薦。最後でとうとう踊り出し、最後の最後で冒頭の振りが活かされる、素晴らしい映画だ。無理だとは思いつつも可夢偉選手の今シーズンも、傷だらけで美しくなくてもかまわないから、ハッピー・エンドにならないものかと思わずにはいられなかった。この映画のように。


 映画の中の少年は、思い描いていたものとは違ったが、希望ある未来を手に入れた。小林可夢偉選手に未来はあるのか? マクラーレン・ホンダのシートに手は届くのか? それともケータハムのシートすら失うのか? シーズンはまだ、始まったばかりだ。