あ〜さんの音工房

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過ぎたるは及ばざるが如し

 

 暑い。6月に入った途端、狂ったような日射しが降り注いでいる。まるで1980年前後の渡瀬恒彦が如く牙をむく太陽には、白旗を揚げる他ない。梅雨はどうしたのかと問えば、同時進行中なのだそうだ。気候は不安定この上なく、夕立どころか氷が降る始末。何がなんやら訳が解らん。
 日射しを直接浴びると、2分と経たずに汗が噴き出す。持ち歩くタオルも1枚では足りずに、もう1枚欲しいくらいだ。これだけ汗にまみれると、デフォルトの加齢臭と結託して大変よろしくない。洗濯の際の柔軟剤の香りも、いつの間にやら汗と加齢臭の勢いに追い越されてしまう。元々たいして香り付けはしていないが、加勢してやろうとは思わない。


 何時ぞやすれ違い様に男子学生から柑橘系の香りを撒き散らされた事がある。それ必要か、あからさまに香らせて。気持ちは判らないでもないが、よもやワキガでもあるまいし、滑稽ではないか。そして、それは場所によっては迷惑行為になるということを彼は知るべきだ。
 友人とともに早めの昼食を摂りに向かった時のことだ。そこは本格的な中華を出す店だったが、入った途端違和感を持った。食欲をそそる香りで満たされているはずの店内に、強い香水臭が漂っている。何が起きているのかと見渡すと、どうやら若いカップルの女性の方が元凶のようだ。デートだかなんだか知らないが、いくらなんでもやり過ぎだ。中華の店でこれだ。寿司屋だったら摘み出されても仕方ない(まともな店ならその客が帰った後に、店主が詫びるが)。
 自分の臭いは気付かないものだと言うが、そんな呑気していられない状況もあるのだ。極端に香りを纏う、極端な味の食を好むなど、どうも近頃よろしくない。何事もほどほどが良かろうに。
 また、嫌煙運動の煽りで屋外に出て喫煙する人が増えたが、外で吸えば良いってものじゃないだろう。スプレー塗料のシンナー臭には直ぐさま反応しても、タバコには無頓着な人も多いが、スプレーはけしからんがタバコは黙認っておかしくはないだろうか。他人の迷惑になる喫煙が趣味嗜好であるのなら、室内で楽しむべきではないのか? 外に撒き散らせば、どちらも公害だろうに。訳が判らん。


 今時の若者たちは、花の香りを受け付けないらしい。生々し過ぎて臭いそうだ。逆に化学合成された香りの数々は良い匂いなんだと。果たして彼らは新緑の季節、青空を仰ぎ、深呼吸しても何も感じないのだろうか?
「そんなの花粉だらけで無理っス」
 ああ、そうですか。


 加齢臭は押さえ込みたいものだが、かと言って柔軟剤や香水を撒き散らすのも考えものだ。何事もほどほどがよろしい。ギラついた渡瀬恒彦の前では、ひれ伏す他ないのだからな。