あ〜さんの音工房

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NDロードスターはこんな車だった

 

 さて、充分に睡眠をとったぞ。6時過ぎには起きてしまったけども。軽く体操してと。頻尿の対処よし。天候よし。広島絡みのTシャツよし。意外と冷たい風が吹いているんで1枚羽織ってと。さあ、試乗に出かけよう。



 NDのエクステリアデザインはとてもカッコよろしい。異常なまでに情熱を注いでいる。外板のプレス担当のことなど何も考えていないかのようだ。他メーカーも驚いているのではなかろうか。間近で見てみて欲しい。この異様なまでの存在感を。
 唯一謎なのは、マフラー出口が2本になっている事だ。消音器の後で2本にしているので、音質対策ではなさそうだ。デザイン的な要求なのか?



 この車、シートが良い。



 背もたれがネットになっていて、これがとても良いんだ。左右も幅がありすぎずにきっちりとサポートしてくれる。そしてこれ ↓



 座面の高さを調節出来るようになっていた。NAは座面の先端が高過ぎてペダル操作に支障があったので、15センチほど中のウレタンを切っていたから、この機能は大歓迎だ。
 動かす前に開くとこ開いて見せてもらおう。


 トランクはフードがアルミ製だしダンパー付いてるしで至れり尽くせり。スペアタイアがないので、その分深さがありなかなかの容量だ。閉じる時も気持ちよくカチリと閉まる。
 トランク横運転席側のリアフェンダーにアンテナがあるが、これは伸び縮みせずに、ねじれば外れる。NAと同じだ。
 内側に防音材が付けられているエンジンフードを開けてまず目を引くのは、完全なフロントミッドシップが実現されている点だ。その為にフロントウインドウよりも内側にエンジンが捩じ込まれている。



 そのおかげで先端にエアクリーナーを搭載出来ている。トランクで見つからなかったバッテリーも隣にある。



 走り出す前に幌を開こう。
 幌はロックを外すとエンジンを回していない状態でもサイドウインドウが少し下がり、そのまま畳める。被せる時はロックを外すと30度位までバネで浮き上がって来るので楽々閉じれる。運転席に座ったまま10秒で開閉出来るのでNAとは隔世の感あり。至れり尽くせりの優れものだ。これらがどれほど有り難いかは幌車乗りなら解るはず。畳んだ姿も奇麗でカバーは不要(設定自体がないはず)。


 出来の良いシートに収まり、ポジションを合わせる。ステアリンングは小口径革巻き、シフトノブは球形革巻きで至れり尽くせり。試乗車は「スペシャルパッケージ」なので、センターディスプレイがあり6スピーカーも装備されているが、エクステリアに高級感はない。ここに予算を割かないのがロードスターの伝統。専用シャシーや凝った足周りとのバーターだ。デザインは良いので気にしてはいけないところだ。
 運転席からの眺めはすこぶる良い。タイヤハウスからボンネットにかけての盛り上がりや、ドア上部に配されたボデー色が、運転していては見る事の出来ないエクステリアデザインを彷彿とさせて止まないのだ。


 走り出してまず感じたのは剛性感だ。普段サビサビでヘロヘロの車ばかりに乗っているせいもあるだろうが、NAとは比較にならないほどシャシーは丈夫なようだ。このグレードには補強が入っているそうだし。
 左右に振ってみた感じは、しっとり感がありクイックではない。よく話題になる回頭性などは、前輪のトーの加減でどうにでも味付け出来るので、それほど重要な事ではない。それよりも振ってみて重く感じないかどうかの方が問題だが、安心して下さい。重くなかったですよ。
 音的にはエンジンの回転を低くしていれば幌を畳んでいても静かだ。これはNAと同じ。回転を上げて行くと吠え始めるが、NAの方が野太く古典的な感じであった。NDは見た目に合わせてシャープな感じ。NAのような出力の頭打ち感はないが、トルクの盛り上がりもない。リニアに直線的な感じだ。極めて自然に加速して行く。トルクの不足感はなく、平坦な道なら4速1500回転からでも加速した。
 ひとつ違和感を感じたのは、回転が下がらないことだ。シフトアップする際、回転が落ちてこないので上手くつながらない事があった。慣れれば問題ないことなのだろうが、気になった。アクセラのエンジンを流用しているそうだが、結構弄っているのではなかろうか?
 また「スペシャルパッケージ」にはLSDが装着されているが、実質的な自動車専用道路を含んでいるとはいえ直線ばかりの試乗コースではカリカリ音を立てることもなかった。登坂のヘアピンコーナーひとつあればどんな感じが判るのだが。
 試乗を終えた時に表示された燃費は18キロを超えていた。カタログ値は17,2キロなのだが、実走行でも良い数値が期待出来そうだ。またマニュアルなのにシフト表示がされるので驚いた。イマドキの車だねぇ。
 この車を運転して思うのは、楽しいの一言だ。NAの欠点を全て払拭したのがNDだと考えて良いだろう。おじさんたちにとっては素晴らしい回春剤であると言える。


 フロントミッドに縦置きされた直線的に吹け上がるエンジン。前ダブルウィッシュボーンマルチリンク式のサスペンション。専用6速トランスミッション。惚れ惚れとする美麗なエクステリアデザイン。素晴らしく機能的な幌・・・諸々鑑みて総合評価するなら新型NDロードスターは100点満点中500,000,000点だ(マジで)。この車は「先祖帰り」したと評されているが、それは「小型化した」とか「車重が1トン切った」からではなく、「現在の技術でNA開発当時の志をもって」造り上げた事を指している。NA,NB乗りの人で、NCは違うと感じているならば試乗してみて欲しい。私の書き連ねたことが解ってもらえると思う。同じ車種を四半世紀に渡って造り続けたからこそ、この『ロードスター』があるのだ。


 未だに興味はあるにしろ『S660』はすっかり霞んでしまったし、開発されていると聞くトヨタの『ライトウェイトスポーツ』に対しては不信感が拭えない。何しろ他社の車をちょろっと弄って『86』だと言い張っている企業だからな。良い車なんだろうけど、あれはスバル車だろうに。トヨタマツダから「ハイブリッド車よりも省燃費のガソリンエンジン」や「試みたがここまで小さくする事が出来なかった1500ccのディーゼルエンジン」を搾取するだけでなく、車に込められた志こそを学ぶべきだと思う。


 新型NDロードスターはNA同様に四半世紀後も乗り継がれる『名車』になるだろう。マツダから私たちに対しての満額回答だと考えて間違えない。乗りたい車が存在することの幸せを感じながら、平成31年3月までは長いなと思いつつ帰路についた清々しい1日だった。