あ〜さんの音工房

アーカイブはこちら→http://akeyno.seesaa.net/

貧困層の粉コーヒー

 

 『自家焙煎コーヒーの美味しい店』と言うタイトルのローカル番組を観た。コーヒーに興味はあるが知識はないので、得る所が少なくなかった。


 数店を訪ねていたが、初めの店では豆の煎り方による味の違いが紹介されていた。浅煎りは色は薄く、味も軽い。深く煎れば色は濃く、味も重い。そうだろうなと思う。近頃よく飲んでいるコンビニやスーパーのフードコートにある「100円で挽きたてドリップコーヒー」は、一様に色濃く苦みが強い。不味くはないが、好みではない。
 全く知らなったのは生豆の段階で選別をしていることだ。機械で焙煎をする前に、手作業で一粒一粒確認し、虫食いや欠けている物を取り除くのだ。この「ハンドピック」と呼ばれる作業が、どれほど地道で忍耐のいることか、私には解かる。
 あるお店の方はスツールに腰掛けて「ハンドピック」していたが、この欠点豆を選り分ける様はまるで「武器屋のおやじ、錆弾よこしやがって」と毒づき、艇に搭載している機関銃に込める弾丸を選別しているポルコ・ロッソを彷彿とさせた(カーチスと再戦する前夜のこと。寝付けないフィオがお話をねだって、あの名エピソード『飛行艇の墓場』が披露される。当初脚本にはなかったこの場面が、ポルコの人物像に深みを与え、アダージョ楽章のような静けさがクライマックスの、駿じっじが1番描きたかっただろう原作漫画では不可能だった壮絶な空中戦の見事な序章になっているのだ。このシーンが好きだという人も多かろう、私もその1人だ、って長い)。また他の店のおやじさんは、長時間のハンドピックがどれほど大変だったかをしみじみと振り返っていた。
 ここで疑問に思ったのは、弾かれた欠点豆はどこへ行くのかだ。廃棄する訳はないだろう。だとするとこの不良品たちが私が買い求めているようなグラム100円そこそこの安い粉コーヒーに混ざっているのではなかろうか?
 以前ある人に「すでに焙煎して挽いてある粉コーヒーが、なぜ生豆より安く売られているのか解るか?」を問われたことがあった。私は考えたこともない、と答えると「屑が混ぜてあるからだ」と教えられた。この「屑」には、このような欠点豆も当てはまるのではないだろうか。


 近隣に(と言っても車で半時間から1時間超くらいの距離ですが)老舗から新規まで様々な『自家焙煎コーヒーの美味しい店』があるのはありがたいことだ。是非訪れてみたい。
 毎日数杯のコーヒーを飲むが、専門店に出向くことはない。せめて家で淹れる1杯くらいは美味しいと思えるものでありたいものだ。専門店で焙煎された豆を買い求めてハンドドリップする。それくらいの生活水準に辿り着きたいと願う今日この頃だが、相変わらず安い粉コーヒーをコーヒーメーカーで淹れてキーボードを叩いているのだった。だが、これはこれで悪くはない。