あ〜さんの音工房

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シャコンヌへの道 その1

 

 楽譜はこれを使う。



 ベーレンライター新版。記憶が定かならば20年以上前にヤマハ道玄坂店で入手した物だ。まだクラッシックギターは始めておらず、エレギも休止していた。クラシック音楽ばかり聴いていて、この頃の洋楽邦楽はすっぽり抜け落ちている。とにかく時間がかかるんでね。毎日寝る間も惜しんでバロックから近代までの有名曲をひと通り聴き進めていた。モーツァルトがアイドル。バッハはそれほど積極的には聴いてなかったかな。
 では何故この楽譜を買い求めたのかだが、実に素晴らしい曲たちだ、神ってるなと聴いている内に、この6曲はクラシックギターで弾けるのではないのか? いや、ギターで弾いた方がよろしいのではないかと思うに至ったからだ。ところが、そう思いついたのは(当然ながら)私が初めてではなかった。古くはセゴビアが1935年に自らの編曲を、大観衆のコンサートホールで初演し世に問い、その後楽譜も出版されていたのだった。ですよね、マエストロ。流石っす。


https://youtu.be/zcGt9AFlIPY


 今ではシャコンヌだけではなく、当時からのリュート用編曲が残されている物はもちろん、無伴奏チェロの6曲共々全てがクラシックギターのレパートリーとして定着している。(なんなら無伴奏フルートの為のパルティータまで録音した人さえいる)。


 演奏は自分の編曲で行う。上記したセゴビアを初め、ギター用編曲譜はいくらもあるが、プロかハイアマチュアでしか弾きこなせない。私のような独学でぼちぼちやって来た野良ギタリストには難しすぎるのだ。かと言ってヴァイオリン譜をそのまま弾いたのではギターで弾く旨味が出ない。ヴァイオリンは旋律楽器、ギターは和声楽器なのだから(バイオリン譜のまま弾いたプロがいるにしても)。なので私が弾こうと思えば、自分自身で弾けるように編曲するしかないのだ。レギュラー・チューニングで、音数は増やさない方向で編曲してあるが、弾き進めてみて問題が見つかったり、新たなアイデアが生まれれば変える事は厭わない。エレギ、クラギともに完全に独学で、師匠さえいないアマチュアなので、好きにやらせてもらう。何も恐れずにやり遂げたい。
 

 バッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』の録音は、クレーメル新旧盤、庄司沙也香、グリュミオー渡辺玲子(否全曲)、クイケン新旧盤、ハイフェツ、ハーン(否全曲)、シゲティシェリング新盤にポッジャー。以上が手元にあるが、いつの間にかに録音されていたキョンファパールマンなどは今に至るまで聴く機会を持てないでいる。
 シャコンヌだけをピックアップして連続して聴いてみると、同じ(もしくはほぼ同じ)楽譜で演奏しているのに、驚くほどの違いがある。任意のアルペジオ部分は違って当然だが、全体の心象がとても同じ曲とは思えないほど違うのだ。これはクラシック音楽を聴く醍醐味なんだが、今更ながらびっくり。なかでも感銘を受けたのはクレーメル新盤、庄司沙也香、渡辺玲子の3人の演奏だ。
 天衣無縫を地で行くクレーメル。天才が全開している庄司。いずれも素晴らしいが、それらを上回る演奏だと感じ入ったのが渡辺の表現だ。毅然として凛々しく、気高い。もしもダヴィッド・オイストラフが録音を残していたとしたら、これに近いことを表していたのではないのか? こんな感じを受けたのは私だけかも知れないが、ふと、そう思った。


 曲への取り組みだが、考えあって中間の長調部分から始めて、後半の短調部分までを暗譜してから、前半の短調部分に進みたい。以前一通り弾いてみた経験から前半は演奏困難なので手こずるだろうと思う。なので前半を仕上げてすぐにしっかりと暗譜した中間後半に繋げれば良い結果を得られるだろうと言う目論見だ。とにかくこれまでの3曲分くらいの暗譜を1度にしなければならないので、一朝一夕には行かない。
 演奏は暗譜でしたい。楽譜を覗きながらでは集中出来ないからだ。暗譜には十分な時間をかけたい。それが技術的な困難を克服する時間にもなるだろう。飽くまでも目指すのは「全曲演奏一発撮り」なので、必ずミスや弾き損じは出る。それをリカバーする「危機回避能力」も向上させなければならない。それには時間をかけて弾き込むしかないだろう。



 昨年末から始めているので、中間部分はアルペジオの手前までは進んでいる。だが、このアルペジオをどのように弾くかはよくよく考えたい。バイオリニストがやっている「ぶんちゃ、ぶんちゃ」のパターンではなく、もっとギターで弾くにふさわしい音形があるはずだ。見つけたい。


 今後の大まかな予定は、3月の初旬には中間部分の暗譜は終えたい。後半は4月一杯で終えて、暫くは暗譜が定着するまで弾き込む。それから前半部分を始めて、涼しくなる頃を目安に全曲の暗譜を終える。そして年内に仕上げて動画を撮影しアップする。と、こんな考えでいるが、遅れる可能性はいくらでもあるので、それは受け入れる。出来る限りの結果を出したいので、決して急がない。やる気があり、体が動く今やるしかないからだ。数年後では弾ききれない可能性がある。
 この曲に関しては練習風景を中間報告して行こうと思う。何度か動画の投稿もしたい。また次善の策として、3つの部分を3つの動画にわけて収録する事も考えている。前半と中後半の分割投稿もあり得る。もちろん全曲を1度に収録するに越した事はないが、それまでの多大な努力を無駄には出来ない。どんな形にせよ私の思い描く『シャコンヌ』を示したい。


 それにしても野良ギタリストには高い目標だ。高過ぎて今はまだその頂は見えもしないが、必ず頂上に辿り着けると信じている。一歩一歩登って行こう。そこで目にする景色を楽しみにしながら。