あ〜さんの音工房

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大皿のリンゴ

 親戚の社長さんちに遊びに行った時のことだ。


 あちらは子供3人の5人家族。こちらも同じく5人家族。埼玉の一軒家とは言え、10人集まると流石に賑やかだ。家の前では近所の子供たちを交えて野球もどきのことをして遊び、側の田んぼではザリガニ獲りも出来た。決して広くはなかったが、何しても楽しめた。どこへ行っても子供だらけだった。


 豪華絢爛たる夕食をご馳走になった後、大皿にリンゴが載せられてやって来た。四等分され、黄金色の蜜を湛えたそれは、甘酸っぱい香りを伴って食卓に並んだ。子供たちから歓声をもって迎えられたそれを見て、妹が言った。


「ひとり何個ずつ食べていいの?」


 完全個人配膳制であった我が家では、デザートも一人ずつ配られていたので、妹はどれだけ食べるべきなのか解らなかったのだ。


「いいのよ。いくつ食べてもいいの。たくさん食べてね」


 社長夫人は言った。父と社長は笑った。母は頬を赤らめた。ぼくらはたらふく食べた。それはそれは美味しいリンゴだった。