あ〜さんの音工房

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昭和の大人

 

 昭和の大人がまた一人逝ってしまった。


仁義なき戦い』『皇帝のいない八月』『セーラー服と機関銃』『時代屋の女房』。上げれば切りがないが、何と言っても俺の溺愛映画『戦国自衛隊』の矢野陸士長役に尽きる。



「あめぇんだよ、伊庭三尉はよぉ」と、当時ギンギンギラギラだった千葉真一に牙を剥き、火力を持って時代を弄ぶ様は痛快の一言。渡瀬恒彦がこの役で出演していなければ、ここまでの思い入れはなかった。『戦国自衛隊』は最高に映画らしい映画だ。異議は認めない。どこぞのガンマニアの局アナが残念作に上げているらしいが、この当時(1979年公開)銃器は警察、自衛隊、反社会勢力しか持ってねえんだよ。一般じゃマニア以外見た事もないんだ。ダダダと音がして、銃口から火ぃ吹いてりゃいいんだよ。細かい事言いやがって。さては日本人だな。お前は1度俺と飲み明かしやがれ。空が白み始める頃には意気投合して一緒に喝采を叫んでいることだろうよ。



「狂犬」呼ばわりされていた若き日のデタラメ作品『狂った野獣』『暴走パニック大激突』。先月廉価で再発されたこれらが追悼盤となってしまうとは無念だ。


 俺たち昭和の終わり育ちの子供にとって、大人は恐ろしい存在で、誰も彼も室田日出男のように見えたものだ。とにかく怖えんだよ。学校じゃセンセ達からの鉄拳制裁は当たり前。何かにつけて殴られていた。そこらで遊んでりゃ知らない大人からも殴られた。大人と子供は対立構造にあり、大人は出る釘は打ちまくったし、子供は親殺しを目論んでいた。大人は常に巨大な存在であり、俺たちにとっては、いつか倒さなければならない目標であった。それが昭和時代の当たり前だ。なんだい、友達親子って? 反吐が出るぜ。これが昭和の大人だ ↓ 友達になんかなれるかよ。



 近頃大人らしい大人が周りにいなくなったと思ったら、俺たちがすっかり大人になっていたんだ。そりゃ見なくなるわな。スクリーン狭しと暴れ回った大人たちも、一人また一人といなくなって行く。渡瀬恒彦享年72歳。早過ぎるだろ。寂しいぜ。