あ〜さんの音工房

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ピチカートなしよ


 ピアノ譜に当たったら「dolce」の指示があった。このパートはタレガが大胆に変更したのだと解った。編曲の狙いは「対比」だと思われる。ポコポコした後に柔らかく弾いて相対的に効果を上げたかったのだろう。だが、オリジナルはこのパートに細かく「松葉」を付けている(説明しよう! 松葉とは楽譜に書かれた <や>のことだ! この印が始まった箇所から音量を増減させるのだが、作曲者の癖があって、必ずしもただのクレシェンド・デクレシェンドではなく、アクセントと判別が出来なかったりルバートを伴うなど結構あやふやなのだ!)。なのでここはピチカートせずに、指示を考慮してダイナミックに演奏することにした(出来る範囲でですが)。



 野良ギタリストは記号の類いに馴れていない事が多い。そもそも多くのギターの楽譜には速度指定がないので何も考えずに弾き出すことも多いし、拍の頭は強奏だと思い込んでいたり、緩急強弱が技術的に困難だとそれを無視せざるを得ない場面も出て来てしまう。なので作曲者の意図と自身が受けた感覚をすり合わせると必ずジレンマが起こる。編曲されている場合はオリジナルと編曲譜を検討しなければならないので、話しはさらに複雑だ。


 タレガの編曲は、E弦を余らせないようにイ短調からホ短調へ移されているほか、和声が簡略化されているので、響きも単純になってしまっている。ピアノ曲をギター曲に仕立てる場合のあるあるだが、全体の印象は原曲の持つ情緒がよく表された優れた編曲であると思う。なので弾けるのに抜けている「ぶんちゃっちゃ」の「ちゃ」や、いくつかの和音の追加はしているが、反対に左手の押さえが困難な場面では無理に持続せずに音を切るなどの変更を行った。弾けなければ仕方ないのでね。多かれ少なかれ野良ギタリストたちは必ず「俺様版」を編んでいるものだ。



 音色はかなり安定して来た。今度こそこの曲を弾ききれると良いのだが。どうなることやら。