あ〜さんの音工房

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検討してみると

 

 さて、弦も交換したことだし(低音側だけですが)次に進もう。



 今回取り組むのは、古典派の雄フェルナンド・ソルの『主題と変奏付きメヌエット作品11』。演奏時間にしてそれぞれ2分程度の12のメヌエットの前後に変奏曲が配置してあるが、全曲演奏されることは稀で、数曲が抜粋されて演奏会なり録音なりに採り上げられてる。その中からセゴビアも録音している第5番に取り組む。


 遥か以前に楽譜を入手したとき、まるで歯が立たずに尻尾巻いて退散したこの曲。今なら弾ける気がする(なんの根拠もありませんけど)。



 なので楽譜は二種類ある。上のが以前ので、下のは(野良ギタリストにとっては)一生分のソルはここにあるでお馴染みの『演奏会用ソル名曲選集』。比べてみたら違いがあった。



 この曲は前半8小節と16小節の後半で出来ているが、後半の強弱記号に違いがある。「以前」には 後半4小節目拍の頭に「rinf.」の指示がある。「f」はフォルテの略記なんで急に強くの意味だが、うーん。14小節目頭には両方に「rinf.」が付いているがここも、うーん。不自然じゃなかろうか。それが狙いなのか・・・?
 もう1カ所は後半8小節「演奏会用」には「ff」の指示がある。「以前」は5小節の頭が「p」で、クレシェンドして7小節頭の「f」で終っているが「演奏会用」はさらに8小節目で「ff」にしろって事だ。ここはフレーズの終わりまでクレシェンドし続ける方が正解な気がする。


 古典なんだから楽譜通りに弾けば問題なしかと思ったらさにあらず。考えてみると、直筆譜と出版譜で違いがあることもあるし、当時は写譜屋が絡んでいたので移し間違いもあっただろう。規模の大きな曲など直筆譜からパート譜を作る訳だが全部手書きだ。写譜したり清書したりで間違いが起こった。なので古楽器演奏家の皆さんは自身で楽譜を仕立てているのが普通だ。楽団に備え付けの楽譜は後年の手垢に塗れていて当時の形態とはかけ離れていると。楽器の音域が広がったので勝手に直されていたりするし・・・。ソルってモーツァルトと同時代人なのよね。古典ギターで弾く試みも多くされているしね。
 ソルの直筆譜に当たる術も無いし、学術的にどうこうしたい訳じゃないが、今回こそ納得のゆく演奏をしたい。以前はなぜ弾けなかったのかを考えながら望もうと思う。なんとかして弾き切りたい。出来るだろか? やってみなければ解らない。弾ける気だけはしているけれど、根拠は特にない。