あ〜さんの音工房

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好い加減なもんだ

 

 6弦をDにチューニング。ドロップDて呼ばれてる奴だな、エレギの世界じゃ。ニ長調3/4拍子。Andante Maestoso(遅く無い速度で、堂々と)。アンダンテ=「歩く速度で」と訳される事が多いが、当時の人々の歩く速さは解らないもんね。現代よりゆったりだったと想像出来るが、古楽演奏家の皆さんの多くは、なぜだか速めの速度で演奏する。まあ遅く無い速度に設定すれば良さそうだ。どちらかと言えば「堂々と」の方が難しい。威厳のかけらも無い野良ギタリストに「堂々と」を要求されてもなぁ。元来メヌエットて優雅で上品な舞曲だろ。ワルツみたいに大きな足運びでくるくる回ったりしない、歩幅の狭い踊りだったはず。


 今回取り組むソルの作品11−5が以前はなぜ弾けなかったのかだが、理由は2つあると思う。ひとつは旋律の多くが重音になっていること。もう一つはオスティナートバスが弾けなかったこと。オスティナートバスとは低音が一定の音形で繰り返すパターンのことで、この曲では後半の頭4小節と9小節目からの4小節に出て来る。単純なんでバスだけなら弾けるが、そこに旋律を乗せるのが難しかったんだろう。『シャコンヌ』もオスティナートバスの曲だったが、ゆっくりなので問題はなかった。この曲も今なら弾ける気がする(根拠はない)。




 困ったことに2つの楽譜には冒頭から違いがある。双方ともフォルテの指示は同じだが「演奏会用」は拍の頭を「P指で同時に弾け」と書いてある。これはそうしよう。そしてピアノの指示は2拍目の頭Dからだが「以前」はFAの重音から。これはどちらかが写し違えたんじゃないのか。ここは「以前」の方が自然だと思う。



 次に4小節目の1拍目から2拍目にかけては「演奏会用」には「スライドしろ」との指示がある。「以前」には何の指示も無い。清書か出版の段階で落としたのか? スライドすることで音量が少なくなるので、次の小節のフォルテが有効になる。ここは「演奏会用」を採用することにする。
 次の4小節に違いはないが、冒頭4小節でこんなに違うなんて・・・。両方の楽譜から取捨選択することになったが、どちらかしかなかったならどうしただろう? ブルックナーの版問題って、これの大規模なやつなのか。「なんちゃら版」を謳っていても部分的には指揮者が取捨選択して「俺様版」を作っていることが多いらしいし。原典版以外はね。



 図らずも「俺様版」を編まなければならなかったけれども、前半8小節は強弱記号に留意するだけで技術的には問題なく弾けそうだ。問題は後半にある。桜も満開になったことだし、リベンジを始めるとするか。