あ〜さんの音工房

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オジーの新作『オーディナリー・マン』を聴いて

 オジーの新譜来た!

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 オジー・オズボーン最後の作品となるか?『オーディナリー・マン』が遂にリリースされた。三つ折りの紙ジャケットで、なにやらうやうやしい作り。金かけているぞ。このことからも「最後の」が意識されているように思えてならない(EU盤で入手)。

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  さて、全11曲の出来はどうかだが、その前に録音が特徴的なので触れておこう。一聴して感じるのは音場が広いと言う事だ。上下左右に大きく広がるが、定位は前方で3次元的だ。これはこのジャンルでは珍しい。そして極端なローバランスで、ベースとドラムの存在感が大きい。ほとんど聴き取れないことも多々あるベースが、全編でこれほどの存在感を放っているのは特異と言って良い。ドラムはバスドラはきちんと収録されているが、逆にシンバルは聴き取れない。普通は低域のバスドラムは聴き取れず高域のジンバルは馬鹿みたいにうるさいものだが、反対のバランスになっている。いずれにせよ低音域重視のバランスになっているのは、奏者のパワーバランスによるのではないかと推測出来る。

 ダイナミックレンジはまあまあ。解像力はあまり良くはないが、音場が広いので混沌とした場面でも、オジーの妨げにはなっていない。トータルでは(極端なローバランスではあるものの)まずまずな録音だ。こぢんまりしているよりずっと良い。

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  短い合唱の導入部は露払いであり、序曲のトランペットの咆哮のような意味合いだ。すぐにゴリゴリの単音リフが押し寄せて「オーライット・ナァウ、カァモン・ナァウ。ガハハハハハハハハハハァ!」オジーが華麗に登場する。

 掴みはバッチリな1曲目から3曲目までの流れはすこぶる良い。そしてタイトルチューンの素晴らしいバラード「オーディナリー・マン FET.ELTON JOHN」から5曲目「UNDER THE GRAVEYARD」でピークを迎える作りは聴く者を興奮の坩堝に誘うだろう。

 「これ、エルトンと言うよりビートルズでしょ」な9曲目「HOLY FOR TONIGHT」を交えて意表を突くファストナンバー「IT'S A RAID」から余韻を残す終曲まで、後半も飽きる事無く聴き通せるバラエティに富んだトータル50分弱。収録時間は長けりゃ良いって物ではない。アナログ・ディスク時代は40分前後でお腹一杯だったもんだ。

 これがオジー・オズボーンの辞世の作になっても(そうならない事を望んでいますが)良いようにと細心の注意を払って制作されたと思われる『オーディナリー・マン』。素晴らしいアルバムだ、と声を大にして言いたいが、ひとつだけ、それもその事を期待しているみなさんにとっては致命的なネガティブがあると言わなければならない。それは「特別なギタリスト」が参加していないことだ。

 ランディ・ローズ、ジェイク・E・リー、ザック・ワイルドと「特別なギタリスト」たちと共演し、数々のケミストリーを成し遂げて来たオジー。本作『オーディナリー・マン』にはそれがないのだ。長尺のギターソロがないことも収録時間に大いに反映されている。「ランディだったらどう弾くだろう?」「ザックならどう料理するかな?」と思わずにいられない場面をどう捉えるかで本作の評価は大きく変わることになる。確かに歌詞も書いていないようだし、ギタリストとの共作も無い。「担ぎ出されて歌っただけ」感は否めないところだ。それでも曲はどれも粒揃いなので、それらを歌うことに専念出来たからこその仕上がりなのだと考えれば、オジーのソロアルバムとしては高評価されるべきではなかろうか。

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 それは病身を押して現場に趣き「スタート」「カット」の号令だけを掛けている映画監督のようなものだったのかもしれない。だが、それがどうした。『オーディナリー・マン』は、このやり方でアルバムが作れるなら、次もありだろうと思わせるに充分な出来であり、なんなら次回作は美空ひばり張りに「オジーロイド」として歌う?のだって彼ならばありだろう。

 本人が歌詞書いてなかろうが、ギタリスト不在だろうが、『オーディナリー・マン』は名盤と呼ぶにふさわしいと俺は思うし、次作も聴きたいと期待させる渾身の一作だと断言出来る。

 

                I LOVE YOU ALL!!!!!

 

 俺もだよ、オジー