あ〜さんの音工房

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久しぶりにプロの演奏を堪能した話

 爽やかな晴天の空の下『鈴木大介&古部賢一デュオ・リサイタル』足を運んで来ました。

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 ここ最近とあるロック系ギタリストを意識的に聴いていた。その人はトッププロだが練習熱心で有名であり、性格も穏やかでスポンサーも多数付いている。その正確無比の演奏にはファンも多く、実際非の打ち所がないのだが、今ひとつ熱狂出来ないでいた。

 今日の聴いたリサイタルは、オーボエとギターそれぞれの第一人者のデュオだったのだが、11曲中6曲が映画音楽またはポピュラーソングだった。だがそれらは決して肌触りが良いばかりではなく、そこかしこにプロフェッショナルの印を湛えた演奏だったのでした。

 ギターの鈴木氏は積極的にアンサンブルしているだけあって、もの凄く伴奏が上手い。編曲もとても良く出来ていて、これならピアノじゃなくとも良いのではと思える程だった。それは高い技巧を要するものだったのだが、音楽ありきだったように思う。ここが某ロック系ギタリストとの違いに思えてならない。これはクラシックの演奏家にも当てはまることで、具体的に言うならばデビュー当時のサラ・チャンの演奏が思い出される。有り余る技術で正確無比に演奏しているが、何の感慨も得られることはかったのだ(デビュー直後の録音を聴いた個人の感想です)。

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 今日聴いたデュオはあらゆる意味でプロフェッショナルだった。2つの楽器の為のオリジナル曲はなく、半分以上の演目がポピュラーソングであっても、職業演奏家の凄みを感じ取れる心震わされる演奏であったのだから。

 アマチュアは難曲を弾き切っても「だからどうした」と思われることが多くあるが、やはりそれは技術以外の「何か」が不足しているからだと思う。今日の2人の演奏にはその「何か」があったのだ。真の演奏家にはポロンと和音を弾いただけでも、ドレミと単音を鳴らしただけでも「何か」を伝える能力があるのだろう。

 座席を一つ置きにして集客を半減させての公演だったが、万来の拍手に包まれた良い時間を過ごせた。再びの平穏を願いつつ、演奏家のみなさんには最大限のエールを送りたい。我々好楽家はあなたたちがいなければ、生きている意味が半減してしまうのだと。

 次のイベントはいつになることやら。今から楽しみにしておこう。