霜軍曹がやって来た

　朝、出端を挫かれる。

　霜が降りていたからさ。いよいよ冬将軍がやって来たかとげんなりしながら湯を都合していると、どこからか「冬将軍ではありませんよ」と声をかけられた。んじゃ誰なんだと聞き返すと「霜軍曹ですよ」。なんだ霜軍曹かってそれ誰ですか？　「冬軍の下っ端ですよ」そうか、まだまだ序の口てことかと納得していると、上空から「占領軍が来るのも時間の問題ですけどね」と声の主が姿を現した。

「山を見てご覧なさいな。あんなですから、時機に裾野までやって来るかと」

　確かに。秋は終了。冬が始まったのだ。暫く出番がなかったタンカース・ジャケットを着込んで、トラヴィス張りに猫背で出かけた。今度どこからか声が聞こえたら「You talkin' to me?」と言ってやろう。そうしよう。