あ〜さんの音工房

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ヴィンテージコンデンサで容量を変えてみた話

 ボリューム・トーンの交換に伴って、レス・ポールの配線を引き直したが、ケーブルの細さが気になっていた。

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 スイッチを交換した時に付属して来たと思うが、元々同じタイプので配線されていたので、これを使った。まとまっていて便利だがケーブル径が細過ぎる。この時は替わりがなかったので、そのままにしていた。

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 なので俺様キャスターを組み立てた時の、オールドフェンダー系の太い撚り線が残っていたので、これをスイッチからジャックまでに使って、なんであるのか不明なこれよりは細いがまあまあな太さの撚り線(ベルデン8503?)をボリュームからスイッチまで使って配線し直してみた。元からの半田をそのままにしているが、随分すっきりしたな。

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 ウチのオーディオ用のケーブルは、ある程度の太さの単線平行ケーブルを使っている。一般的な細い撚り線をまとめた物より圧倒的に情報量が多いからだ。単線は音が固くなるし、平行ケーブルはノイズを拾うからと頭から否定する人もいるが、散々比較検討した結果デメリットをメリットが大きく上回るので、オーディオ用の配線は単線平行ケーブルに落ち着いている。

 スズメの涙ほどの電流しか流れないエレクトリックギターの配線を、あまりに太くするのもどうかと思うが、やはりある程度の太さはあった方が良い。特にレス・ポールに代表されるコントロール部とスイッチに距離があるものは、結構な長さの配線になるので、顕著な効果がありそうだ。実際にこのギターでも効果はあった。音像のボケがなくなって、くっきりとした音色に変わったのだ。角が立ったのではなく、密度が上がって焦点が合った感じになった。

 なぜ線径で変化が起こるかだが、ケーブルは銅線なので抵抗になる。細いケーブルを長く使うと情報量が落ちるのはその為だ。ギター用の場合は、ほとんどの場合網でシールドしてある構造なので、外径が太くても絶縁体の厚さで太くなっている場合もあるから注意が必要だ。信号が通る芯線の太さがの方が問題なのだ。またケーブルはコンデンサと同じ機能もしてしまうので、長いケーブルはトーンを絞ったのと同じ事で、ハイ落ちになる。相対的に「低音域が豊か」になったと思われがちだが、高い周波数が失われているだけだ。

 ちなみにギターアンプのスピーカーはフルレンジユニットで、×2、×4と増やすごとに低音が豊かになるが、それも振動板が擬似的に大型化しことによるハイ落ちでしかない。オーディオ用のフルレンジスピーカーは複数使うならツィーターが必須になってしまうが、ツィーターを増設して高い周波数を補わないと、ハイ落ちで聴いていられないからだ。個人的にはフルレンジは単体で使わないと意味が半減してしまうので、片チャンネルに複数使ったことはない。ギター用もスピーカーは一つだけにしている。そもそも大きいと置き場所がない。

 より太いフェンダー系のケーブルを「出口」に向けて使ったのは、オーディオ的な見地から、スピーカーに近い方のケーブルが、より効果が出るからだ。機器間の配線よりもスピーカーケーブルの方が効果が高く、スピーカーからユニットまでの配線はさらに効果が高い。なのでそうしてみた。ボリュームからスイッチまでもフェンダー系にしたら、さらに良い方向に向かうかもしれないが、固くノイズの目立つ音になるかもしれないし、やってみないと解らない十分に改善されたので、このままにしておこう。

 この状態からネックピックアップ用の、トーンコンデンサとボリュームのハイパスコンデンサの容量と材質を変えてみた。

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 トーン用の容量は0.0082μFの600V。これまでは0.01μFだったので、更に容量を少なくして、効きを弱めた形だ。一般的にギター用には使われる事のない数値だ。ハイパス用は0.0015の600Vで、これまでの0.001より、ほんの少し容量を増やしたが、あまりにも僅かな差なので気付かないと思う。そして絶縁体はオイルで、見ての通りヴィンテージのバンブルビーだ、と思う。

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 ヴィンテージコンデンサの知識がないから、その道の専門店で購入したので、そのはずだ。容量は実測で近似値。偽物・レプリカありえませんと豪語しているので大丈夫だろ。側だけバンブルビーで、中身は現代のロシア製ではないはずだ、多分。好みの音色と使用感になれば何でも良いんだが、せっかくなのでヴィンテージ特有の素晴らしい音色を堪能したいものだ。そんなんがあればだが。

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 一般的に使われる容量だと高値が付いている「ヴィンテージコンデンサの雄」バンブルビーだが「使えねぇ」数値のものは驚くほど安値で手に入るのだった(オレンジドロップより安かった)。ハイパス用は適当な数値だが、これも需要がないらしく安値が付いていた。そこらの喫茶店でコーヒー1杯程度の価格だ。

 なんにせよデカいので、取付には足を延長しなければならないし、面倒だ(やりがいがあるとも言う)。

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 思うにパスした周波数をアースに落とす(信号として出力されない)トーン用コンデンサよりも、パスした周波数を信号として出力するボリューム用コンデンサの方が音色に影響するのではないのか? 理屈で考えたらそうなるはずだが、世間はそうは考えていないから、ハイパスに適した容量のヴィンテージコンデンサが安価なのだろう。そもそもハイパスコンデンサはギターに標準装備されていないので、需要がないということなのかな。実際のところどうなんだろう?

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 ブリッジ側は、先日交換した新品で安定した性能の「モダンコンデンサ」。ネック側は、容量は確認済みだが低性能な中古の「ヴィンテージコンデンサ」。後者が交換前より明らかに好ましい方向に音色が変わるなら「コンデンサ沼へようこそ」となり、ブリッジ用のヴィンテージコンデンサを探さなければならないが、どうなることやら。早速弾いてみよう。

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 ・・・うーん。まず、容量の変化は微々たるものだった。0.01でも0.0082でも明らかな違いはない。なので個人的にはネック側のコンデンサは、さらに少ない容量もありだと思う。別の機会に試したい。
 トーンを回して効かせている時の音色は、変化があった。柔らかくハッキリした方向になったようだ。バンブルビーはオイルペーパーコンデンサで、オイルを含んだ紙を絶縁体としているので、ドロドロ・ネバネバな心象を持ってしまうが、そんなことはなく、「ざら」と「つる」の間で「ざら」に近い、「さら」っとした爽やかな音色だ。ただ、全開にしている時の差は、気のせいレベルだった。

 私には聴き取れなかったが、コンデンサを 取り付けるだけで音色が変わるなら、トーンを使わなければ(開きっぱなしの10なら)容量は何でも良いのだから、数値は気にせずに安価なものを取り付けてもヴィンテージコンデンサの恩恵を受けられるってことになるのではないのか。気になるみなさんは試してみたらいかがだろう。

 次にハイカットコンデンサだが、これの効きが素晴らしくて、びっくり。とても滑らかに音量が落ちるが、高域から低域まで満遍なく減衰してバランスが良い。交換前は0.001μFの50Vだったのだが、比べると高域に対して低域がぼやけてしまっていた。ただ、これが耐圧の違いで起きた変化なのか、材質の違いなのかは不明だ。

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 コンデンサをヴィンテージバンブルビーに交換して、結果的には良い方向になったので満足している。特にボリュームを絞った際の自然で滑らかな効き具合は予想外だった。Aカーブのボリュームだと思うが、他のカーブでも同じ事が起こるのかは不明だ。トーンを効かせた時も、カリフォルニアの空のように爽やかになった気がするし(行った事ありませんけど)世評で「音抜けが良い」と言われているのが解る気がする。ただトーンだけの変化なのかボリュームとの相互効果なのかは解らない。何事も試してみない事には解らないものだと改めて思ったな。新しい500円硬貨ほどに複雑なんだろう、きっと。なんにせよ有意義で楽しい時間を過ごせた。

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  いぢっている間にスイッチに不具合が出たので交換した。この切り替えスイッチが、レス・ポールの弱点よね。使える在庫があって助かったよ。さて、演奏して音楽を楽しむとしよう。めでたし、めでたし。