あ〜さんの音工房

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青空に吹く風


 いつ振りだろう、朝から青空だ。



 昨夜の雨が人の世のどろどろを洗い、河に流した。嫉妬、羨望、妬み・・・あれこれを飲み込んだ濁流が唸り声を上げている。あの先はきっと地獄の一丁目。阿鼻叫喚が聞こえて来るかのようだ。
 寒風が吹き抜けた季節は終わり。春風が運ぶ季節の始まり。待ちかねた燕たちが、ひらりひらりと踊り、巣作りを始め出した。雨風に耐えた桜は青空に胸を張っている。



 今年も『春の歌』がラジオから流れるが、カバーしたものを耳にすることが多い。牧歌的な編曲で混声の合唱が「春が来た」感を大いに盛り上げている。作曲者で歌唱者はあまり合唱を用いない人なので、なかなか効果的に聴こえる。
 いつだったか三枝成彰氏が編曲は面白くない仕事だと語っていた。他人の作ったメロディーをより良く仕立てるなんてつまらん。美味しい物はどう料理しても美味しいと思われるだけ。賞賛されるのは作曲者だ。こんな内容だったと記憶している。確かビートルズの名曲たちをインストにした時の事だったはず。でも編曲によって新たな魅力が見いだせたのだとしたら、ありがたいと思う人もいるだろう。歌を作ってみて、自らの編曲力の無さに頭を抱えている野良ギタリストもその一人だ。聴く側にとって様々な可能性を享受できるのはありがたいことなんだ。


 暖かな風に吹かれて体が洗われると、どこからか希望が湧いて来て、明日が待ち遠しくなるようだ。