あ〜さんの音工房

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これまでの『あ〜さんの音工房』ギターの都市伝説編

 世間に蔓延るギターがらみのおかしな噂について考えた記事も書いています。その中からいくつかを紹介します。まずは某有名メーカー製ギターがいい加減な件から。

 

 こんなギターはいやだ!!


「お代官さま〜、大変でございます!」

「なんだ騒がしいぞ越後屋

「こちらをご覧下さいませ!」

「これはギターマガジン'09・6月号ではないか」

「P236のこの写真をご覧下され!」

「こ、これは!!」


「塗料が完全に硬化してないタイミングでジョイントされてしまったようで、塗料が癒着して」いる

と画像が載せられているが更に詳しく見てみると
左側はボデーの塗料だろうが
下側から右側にかけての白い付着物は紙ではないのか?

ネックポケットをマスキングする際に
紙が使われる事は珍しくないが
それは一般的な量産品での話だ。
このギターのネックには「カスタムショップ」と
刻印されているじゃないか!


フェンダー・カスタムショップ=
オリジナル・フェンダーの精神を受け継ぐ
職人達の細部へのこだわりが
優れたサウンドとプレイアビリティを生む
ハイクオリティ生産ライン。
正に本物と呼ぶに相応しい芸術品。


ネックポケットをきちんとマスキングする際には紙など使わない。
全面マスキングテープを貼る。
紙を置いただけでは隙間が出来てしまうからだ。

この『芸術品』には紙が使われた可能性が高い。

なので隙間から垂れる程入り込み
尚かつダマになった塗料を処理する事無く
生乾きのまま組んでしまったのでこうなったのだ!

恐るべしフェンダー・カスタムショップUSA!
言ってる事とやってる事が違い過ぎるだろ!


「ところで越後屋、このギターはいくらの値が付いておるのじゃ?」

「60万円は下りませぬ」

「な、なんと! 越後屋、おぬしも悪よのう」


これはカスタマーがと言うよりも
コンストラクターに問題がある。
ネック・ポケットに塗料が垂れてしまったら
組む前に刃引き(スクレイパー)で取る。
日本のギターメーカーならば。
それ以前にテープできっちりとマスキングするし。


「しかし越後屋、こんな詐欺まがいのギター売れるのか?」

「それが何も知らずにいる町民達に大人気で中には手を合わせて拝む者もおりまする!」

「よし、亜米利加よりガンガン輸入してジャブジャブ稼ぐが良い!」

「ははぁ! 仰せの通りに!付きましてはキックバックの割合でございますが・・・」


リットーミュージックはよくこの記事を載せたと思う。
これは内部告発であり
老舗ギターメーカーに対する挑戦だ!
なにしろこの号には「国産ギター工房の素晴らしき世界」
と題された日本製ストラトタイプが特集されているのだから!!
とても偶然だとは思えない。


次号からフェンダーUSA 日本総代理店の広告が
無くなっているかもしれないぞ。
てか山野楽器は抗議するべきだろう。
明らかに不利益になる事がバラされてんだから。

「大きな問題はないのだが・・・」と
フォローしていたが西村氏も心配だ。
今回に限らず、この人本当の事書き過ぎてるんだよ。
「内側の人」たちが不利になる様な事を
ちょくちょく書いてしまっている。
手品師がタネを明かしてどうするんだよ。
よく干されないな、不思議だよ。

しかしこのメーカーは
どんだけいい加減にやっつけているんだろう?
塗料が生乾きのまま組むって・・・
これは我々ギターを愛するカスタマーに対する
背信行為だ!!


越後屋、そちは裏切る事は無いであろうな?」

「め、滅相もございません!お代官様あっての越後屋でございます・・・・・」


越後屋が輸入した出来損ないのギターを
お代官さまは黙認し続け
町には亜米利加製ギターが溢れ返りましたとさ
めでたし、めでたし。
て、そんなんで良いのか?
我々がもっとしっかりしないと舐められっぱなしだぞ。

こんな物有り難がっていちゃダメだ。
そうだろ?


 
 続きまして、経年変化についての記事をどうぞ。




 杉のギターは経年変化しない


上記の検索で訪れた人がいるんで一筆書いておこう。
「杉のギター」ということなので
クラシックギターを指しているんだろうけど
表面板が杉だろうが松だろうが
経年変化しないギターなど無い。
この世の中のありとあらゆる物は
年月を重ねると何かしらの変化を起こす。


20年ぶりに会ったクラスのマドンナは
大抵の場合劣化が激しい(マジで)


クラシックギターの場合
経年による変化で音質が変わる。
よく「材が枯れる」と言われるが
本当に枯れている訳では無い。


実際は材の水分以外の液体=樹脂や糖分が
固まることで主に高音側に変化が起こる。
これが「材が枯れる」ことで音が変わる正体だ。
それよりも
経年による「劣化」で起こる変化の方が重大だ。
クラシックギターは膠(にかわ)で接着されているが
経年劣化により剥がれてしまうことがある。
それは膠自体に問題が起きたのではなく
湿度が原因のことが多い。


湿度が非常に低い又は直射日光に長時間さらすと
材は割れる。
湿度が非常に高い又は水に長時間浸す又は
サウナに持ち込んで「アイツが出るまでは出ねぇ」
などしていると材は膨らむ。
そして、それらが起きた際に中の部品が外れてしまうんだ。
本来分解する時には熱を加え膠を溶かすが
天然素材の膠は極端に大きな力が加わると堪えられないのだ。


杉の表面板だからと言って
その裏側に取り付けられている材が杉とは限らない。
さらに横、裏板はハカランダ
ネックはマホガニー、指板は黒檀など
ギターは様々な材の組み合わせで成り立っているが
それぞれの膨張率が異なるので
湿度管理をしないと剥がれは頻繁に起きてしまう。


そして、それらは音質に変化をもたらすが
多くの人は気が付かないので
そのままにされていることが少なくない。
表面板のダンピングによる音質の変化は
中野ギター工房主催の実験の様子を参照して欲しいが ↓


http://blogs.dion.ne.jp/akeyno/archives/9129151.html


裏板に付いているバーが剥がれた時にも
当然変化は起こる。
大まかに表現すると「ポワンポワン」した音になる。
しかし、この現象を低音域が豊かになったと
放置している例は後を断たない。

だとしても音の好みは人それぞれなので
それが間違いだとは言うべきではないが
制作者の意図とは違う、という事は出来るだろう。


以上が問いかけに対する答えになっていると良いが
果たして読んでもらえているだろうか・・・



 ギターの都市伝説はいくらでもありますから、機会を設けてまた書くこともあるでしょう。次回をお楽しみに。