あ〜さんの音工房

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ないがしろの主旋律

 ネット社会になって久しい。おかげで世界の片隅、地球の裏側の情報まで見聞き出来るようになった。言葉が障害になることが多いけど、音楽ならノープロブレム。世界中のギタリストの演奏を楽しめちゃう。


A-ha - Take On Me (Alexandr Misko) (Fingerstyle Guitar)

 こちらは押尾学スタイルの編曲・演奏だが、もの凄い。曲間で音程変えてるし。ズレてしまった弦のチューニングを合わせているのではなく、音程を変えて演奏を続けているのだ。それありきの編曲なのである。

 派手な演奏風景だしインパクトは絶大だが、主旋律が弱い。この手の演奏スタイルだと仕方ないのだが、歌の編曲だからね。歌メロが聴き取り辛いのはどうなんだろか。致命的な欠点と言えなくもないだろう。歌の「伴奏」なら最高だが・・・。画的に凄過ぎて、音楽が入って来ない感もあるか。

 この演奏、見る分には素晴らしいエンタテインメントだが、音楽的にはどうなんだろ? 細々とした主旋律の扱いには、どうしても違和感を拭えない。気持ち良いくらい叩きまくっていているんだけどね。


「また君に恋してる」現代ギター 2010年9月号 掲載

 一方こちらは手練た編曲だが、これも主旋律が残念な事になっている。「また君にー」の「ー」が無く、「に」がポジションの移動に伴って、スタッカートされてしまっているのだ。常識的なクラギ用の編曲なので、歌メロ(主旋律)、和声、ベースで構成されているが、アルペジオの和声を持続させる為に「また君にー」の「ー」が維持出来ず省略されている。この部分は曲の表題でありサビなんだぜ。最も気持ちを込めて歌うべきところじゃないのか? 冬美ちゃんも当然そうしているし、省略は有り得んな。なんならルバートしても良いくらいだろ。きっと編曲者はこの曲に思い入れが無いのだろな。私なら「また君にー」の「ー」はビブラートして存分に延ばす。それが可能な編曲を作るよ。

 主旋律をないがしろにしていない編曲をお聴きください ↓


八代亜紀 舟歌(ギターソロ)Funauta (Japanese Barcalore)

 素晴らしい。歌のギター独奏用の編曲はこう有るべき。

 なんにしても到底弾けない編曲なので、野良ギタリスト的にはこれらの曲に限らず自身で弾ける編曲を作る必要があるわけだ。自分の技量と表現したい事の落とし所を見つける為に。

 それにしても良い時代になったもんだ。私が育った頃の音楽ソースと言えば、なんたってラジオ。後は友達のお兄さんのアナログ・ディスクくらいだったもんなぁ。現状は有り難い限りだ。時代に滑り込めて良かったよ。さて、ギター弾こっと。